
住んでいない実家や空き家を前に、「売れるのか」「いくらになるのか」「いつ動けばいいのか」と考えるだけで手が止まってしまう方は少なくありません。南相馬市は、原町区・鹿島区・小高区で事情が大きく異なり、震災と避難の影響が今も物件ごとに残っています。
結論から言うと、原ノ町駅周辺など中心部で状態の良い家は仲介を軸に、小高区の築古・長期放置の物件など仲介で動きにくい家は買取も並べて比較するのが現実的です。買取は仲介より安くなりやすいので、まず両方の見積もりを取って比べる前提で読み進めてください。
- 南相馬市の空き家は、市の調査由来と思われる報道で2,182件(2024年11月報道)。小高区は545件が10年以上放置とされています
- 相場はあくまで目安。築50年超の中古戸建は平均約200万円という二次サイトの集計があります
- 小高区・原町区の旧避難指示区域や津波浸水区域の扱いは、物件ごとに公式で要確認
- 補助金は買う側・使う側向けが中心で、売主向けの支援は限定的です。売れにくい物件は、訳あり物件に強い買取(ラクウル)の無料査定で比較できます
南相馬市の空き家と人口、数字で見える現状
まず公式資料と報道にある数字を整理します。空き家の数え方は調査ごとに異なるため、単純な比較はできない点に注意してください。
| 項目 | 数字 | 出典・注意 |
|---|---|---|
| 住宅・土地統計調査(平成25年・2013年) | 総住宅24,820戸、空き家2,420戸、空き家率9.8% | 南相馬市空家等対策計画(平成30年2月) |
| 同・小高区などの扱い | 避難指示区域だった小高区などは調査未実施。実際はもっと多いと市が注記 | 市が明記している注意点 |
| 民友新聞の報道(2024年11月18日) | 空き家2,182件、うち小高区は545件(25%)が10年以上放置 | 調査時点は記事に明示なし |
| 人口 | 53,804人、26,429世帯 | 2026年9月1日現在、市公式 |
| 高齢化率 | 32.10%(全国は28.60%) | 2020年国勢調査ベース(日医 地域医療情報システム) |
2018年・2023年の住宅・土地統計調査にある市別の空き家数・空き家率は、今回の確認では数値を取得できていません。最新の件数は市の空き家担当に確認するのが確実です。
人口は2015年の57,797人から2020年は56,587人へ減り、高齢化も全国より進んでいます。相続した実家を引き継ぐ人が市外にいる、という状況は珍しくないと考えられます。
南相馬市の売却相場の目安と、築年数による開き
相場の数字は民間の集計(二次情報)が中心です。次の表はすべて目安であり、この価格で売れると保証するものではありません。
| 項目 | 数字 | 出典の種類 |
|---|---|---|
| 令和8年(2026年)公示地価 住宅地平均 | 22,064円/㎡(前年比-1.74%) | 二次サイト集計(国交省データを集計) |
| 令和8年公示地価 全用途平均 | 24,922円/㎡(約8.2万円/坪、-1.66%) | 同上 |
| 令和7年(2025年)基準地価 全用途平均 | 21,186円/㎡(約7.0万円/坪、-1.19%) | 同上 |
| 中古戸建の成約集計(直近3年平均) | 815万円(100件) | 民間集計(GMO不動産査定) |
| 同・中央値 | 築年34年、延床110㎡ | 同上 |
| 同・築50年超 | 平均約200万円 | 同上 |
| 同・築0〜5年 | 平均約2,500万円 | 同上 |
地価は市内でも差があり、集計上の最高は原ノ町駅周辺の36,680円/㎡、最低は日立木駅の9,295円/㎡です。1993年のピーク(87,233円/㎡)から長く下落傾向が続いています。
中古戸建の平均は年別に見ると2025年が750万円、2019年が1,850万円と大きく振れています。築年数による価格差が非常に大きいため、築古の家は「平均」より低く見るほうが無難です。
国土交通省 不動産情報ライブラリの実際の取引記録は今回確認できていないので、売り出す前にそちらでも近隣の取引を見ておくと安心です。
小高区・原町区の旧避難指示区域にある家で確認すること
南相馬市で他市と最も違うのが、原発事故による避難指示の経緯です。2011年3月12日に10km圏から20km圏へ避難指示が広がり、小高区の人口は震災前(2011年3月11日)の12,842人に対し、2018年1月31日時点の居住者は2,469人でした(空家等対策計画)。
2016年7月に小高区・原町区の一部で避難指示が解除されたとする報道図解があります(時事通信の見出しで確認、本文は未取得)。現在も帰還困難区域が市内に残るかは今回確認できておらず、区域の現況は必ず市の公式情報で要確認です。
旧避難指示区域(小高・原町)の居住状況は、住民登録6,314人に対し居住4,257人、居住率67.4%(2026年8月31日現在、市公式)。約3割が登録はあっても住んでいない計算で、周囲に空き家や空き地が点在しやすい環境と考えられます。
津波の被害も大きく、市資料では浸水面積40.8km²(小高10.5、鹿島15.8、原町14.5)、1,509世帯が被害(全壊1,164)、死者588人とされています。津波浸水区域での住宅制限や災害危険区域の指定有無は、今回確認できていません。
個別の土地が該当するかは、市のハザードマップと都市計画課で要確認です。
売却の前に、次の点を整理しておくと査定がスムーズです。
- 相続登記が済んでいるか、名義が誰か
- 荒れた庭・家財・仏壇などが残っていないか
- 建物の傷み具合(雨漏り、シロアリ、傾き)
- 土地がハザードマップ上どの区域か
南相馬市復興推進空き家・空き地バンクと「ミライエ」
南相馬市には「南相馬市復興推進空き家・空き地バンク」があり、平成26年4月1日に始まっています。平成30年2月末の時点で、土地69件・建物38件が登録され、成約は土地19件・建物24件でした(空家等対策計画)。
市の窓口は建設部 都市計画課 住宅政策室です。
物件掲載や相談の入口は「ミライエ(南相馬空き家・空き地サポートセンター)」です。宅建協会・全日本不動産協会・建築士会が設立し、市から委託を受けて運営しています。
相談は無料で、売却・賃貸・相続や片付けの相談も可能とされ、2023年1〜3月だけで87件の相談がありました。所在地は原町区旭町1-46-4 2F、電話は0244-26-6383です。
具体的な登録条件や手数料は、公式ページに明記がなく今回は確認できていません。申し込む前にミライエか市へ問い合わせてください。
なお2024年からは賃貸向けに、物件査定で賃料を決めるDIY賃貸「ツクッテ」も導入されています(民友新聞)。
公式情報はミライエ公式サイトと南相馬市の住宅政策室ページで確認できます。
南相馬市の補助金は「買う側・使う側」向けが中心
確認日は2026年10月6日です。次の制度はいずれも、売主ではなく買主や活用者が使う性格のものが中心です。
ただ、買い手に「使える制度がある」と伝えられることは、売り出しの材料になり得ます。
| 制度 | 内容(上限などは目安) | 年度・受付状況 |
|---|---|---|
| 空き家利活用推進事業補助金 | 改修の基礎額は最大100万円(補助率1/6) | 令和5〜8年度(市公式) |
| 同・加算 | 加算金25万円×4種、家財処分費20万円で最大220万円 | 工事30万円以上が対象 |
| 同・要件 | 改修後の定住、自治会加入、市内業者、着工前申請 | 完了期限は令和9年3月31日 |
| 住宅購入等世帯定住促進事業奨励金 | 基本100万円 | 年度は記載を確認できず(ミライエのサイト情報) |
| 同・加算 | 旧避難指示区域25万円、移住25万円、解体新築50万円など | 同上 |
| 福島県12市町村 空き家改修等補助(移住者向け) | 改修最大250万円、片付けのみ最大50万円など | 令和8年度の支援制度一覧(民間運営の移住サイト、二次情報) |
| 空き家解体支援事業補助金 | 特定空家等は最大100万円 | 解体業者系ポータル(二次情報) |
| 同・管理不全空家 | 最大75万円。市内業者・全解体が条件 | 令和8年度の受付状況は未確認 |
利活用推進事業補助金の公式ページはこちらです。解体補助は要綱の公式ページを取得できておらず、受付の有無・金額は必ず最新の公式ページで確認してください。
年度途中で受付が終わる制度もあります。
仲介で動く家と、買取を考える家の分け方
正直に切り分けると、次のようになります。
| 売り方 | 向く家の条件 | 補足 |
|---|---|---|
| 仲介が向く | 原ノ町駅周辺など中心部、築年が比較的浅い | 時間をかければ買い手が見つかる可能性 |
| 仲介が向く | 荷物が少ない、境界が明確 | 復興関連の移住・起業需要も報じられている |
| 買取も比べる | 小高区などで長期放置、築50年超で傷みが大きい | 売り出しても反応が薄い場合に比較 |
| 買取も比べる | 残置物が多い、相続人が複数 | 早く整理したいときに検討 |
買取は、業者が直接買うため売却までが早く、残置物や傷みを現状のまま任せられる反面、仲介の成約価格より低くなりやすいのが一般的です。売れにくい家の場合、価格より「持ち続ける固定資産税や管理の負担が終わること」に価値を感じる方もいます。
訳あり物件の買取に強いラクウルの評判や使い方は、次の記事で確認できます。


事故物件(人の死が関わった物件など)の場合は、専門の窓口もあります。


小高区や築古で売り出しに不安がある方は、まず無料査定で金額の目安を知っておくと比較しやすくなります。
売却を前に進めるための順番
最後に、ここまでの内容を動く順番に並べます。4つの手順で進めると、迷いが減ります。
① 市のハザードマップとミライエで、土地の区域と相談先を確認する
② 地元の不動産会社に仲介の査定を依頼する(複数社で比較)
③ 同時に買取の査定も取り、金額と売却までの期間を並べる
④ 売り出し期間の上限を決め、反応がなければ買取に切り替える
ミライエには無料で相談できる窓口があるので、最初の整理に使うのも手です。遠方にお住まいの相続人の方は、まず電話で相談の可否を確認してみてください。
「片付けも手続きも面倒」「今さら誰に聞けばいいのか」「売ってから後悔しないか」。そう迷って時間だけが過ぎていく気持ちは、よくわかります。
ただ、空き家は持ち続けても管理の手間と費用が続き、周囲の状況も変わっていきます。売るか貸すか決め切れなくても、査定は無料で、金額を知るだけなら何も失いません。
事実と数字を並べてから決めれば、後悔は小さくできます。
まずは売れにくい家でも相談できるか、気軽に確かめてみてください。
